モノラルカートリッジのヘッドシェル選び 比較して解った! オルトフォンとオーディオテクニカ
【もくじ】
軽量ヘッドシェルの音質比較(モノラルカートリッジAT-MONO3との相性)
ヘッドシェルの選定の前提条件
TEACのTN-3Bというアナログレコードプレーヤーは薄型軽量のレコードプレーヤーを購入した。
2022年では新型に更新されているようだ。
TEAC ベルトドライブ・ターンテーブル TN-3B-SE チェリー
このTN-3B というレコードプレーヤーのトーアームは、S字型のユニバーサルトーンアームで、SAECのナイフエッジというスタティック型のS字トーンアームが使われている。
TEACのレコードプレーヤーTN-3Bの取扱説明書を読むとSAECのナイフエッジのトーンアームに適合するカートリッジの質量は、3.0g〜12g。
ヘッドシェルを含む適用質量は、14g〜23gと記載されている。
ちなみにTN-3Bにはカートリッジが付属されている。
そのカートリッジは、オーディオテクニカ製のAT-VM95E for TEACというもので、当然最適化された重さのカートリッジで、質量は6.1g、ヘッドシェルは11g(ネジ、ナット、ワッシャー含む)となっている。
カートリッジとヘッドシェルを合計して17.1gとなり、当然ながら適用質量の14g〜23gの範囲に収まっているものである。
ソニー・ロリンズのために!モノラルカートリッジAT-MONO3/LP
初めて買ったモノラルのレコード盤は、ソニー・ロリンズの「橋」というアルバム。
購入してから後に知ったのだが、そのレコードは ”ペラジャケ” というものだった。
その名の通りアルバムジャケットがペラペラなのだが、中に入っているレコード盤はペラペラではなく逆に重みがありしっかりしている。
レコード盤は重量盤だから必ず音が良くなるとは限らないが、薄いペラペラのレコード盤は反りや振動しやすく、盤の厚みや強度は少なからず音質に影響を与えていると思われる。
ソニー・ロリンズのレコードが家に届くと、オルトフォンの赤いMM型カートリッジ2MREDで再生した。
しかし、スピーカーから流れる音が何かおかしい?
ソニー・ロリンズのサックスがしっかり視えない。
Spotifyなどで聴いたソニー・ロリンズの「橋」はこんな音ではなかったはず。
古い録音のレコードなのでこんなものか?と一瞬考えたが、古い音というより音に違和感がある。
CDでも古い’50年代のマイルス・デイビスやソニー・ロリンズのモノラル録音のアルバムは持っているが、スピーカーの真ん中にしっかりとマイルスやロリンズが視える。
色々調べ考えた挙句、モノラルカートリッジをこのソニー・ロリンズの1枚のアルバムの為に購入する事にした。
購入したモノラルカートリッジは、オーディオテクニカのAT-MONO3/LPという高出力のMC型というもの。
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オーディオテクニカのモノラルカートリッジAT-MONO3/LPで改めて聴いたソニー・ロリンズの「橋」に私は釘付けになった。
しっかりと2本のスピーカーの間にロリンズのサックスが視える。
ちなみに、この時のヘッドシェルはレコードプレーヤー付属のものを間に合わせで使った。
トーンアームに適合するヘッドシェルの考察
TEACのレコードプレーヤーTN-3Bに取り付けできるヘッドシェルとカートリッジを合わせた重さの上限は約23gとされている。
購入したオーディオテクニカのモノラルカートリッジAT-MONO3/LPの質量が6.9gなので、ヘッドシェルを含めた重さの上限23gから差し引くと16.1gまでのヘッドシェルが使えることとなる。
レコードプレーヤー付属のヘッドシェルは11gなのでこのまま使っても良いのだが、やはりプレーヤー付属のカートリッジ用として使いたい。
そこで新たにヘッドシェルを購入する事にした。
ヘッドシェルは、音の入り口のカートリッジとトーンアームとをしっかりと繋ぐ重要なパーツなので、上限ギリギリの重くて強度の高いものが良さそうに思った。
しかし、将来欲しいカートリッジが重かったり、カートリッジのリード線の交換やヘッドシェルの防振など、手を加えたくなるかもしれないので、上限ギリギリの重さではなく、逆にできるだけ軽量のヘッドシェルを選ぶほうが良いと判断した。
レコードプレーヤーのトーンアームの先端にはカートリッジが取り付けてあり、反対側にはカウンターウエイトが付いている。
カートリッジを交換した場合に、トーンアームを一度水平にする「ゼロバランス調整」という作業が必要になる。
いわば天秤のように、カートリッジ側とカウンターウエイト側をバランス良く水平になるように釣り合う状態にするのだが、この時カートリッジ側(ヘッドシェルを含む)が重ければ、カウンターウエイトをトーンアームの後ろに下げていって天秤のバランスをとるのである。
仮にカートリッジ側が重過ぎた場合、カウンターウエイトを後ろに下げきってもカートリッジ側が持ち上がらなくなりゼロバランスが取れないという自体に陥る。
マニアックなプレーヤーの場合は「サブウェイト」がオプションなどであり、重たいカートリッジを取り付けたい時は、既存のカウンターウエイトにさらにサブウエイトを加えてトーンアームのゼロバランス調整をすることになる。
しかし、TEACのTN−3Bは薄型軽量級のレコードプレーヤーで、サブウエイトを取り付けるような仕様にはなっていない。
その気になれば、カウンターウエイトに鉛のテープなどを貼り付けてサブウエイトと同じ作用をするはずだが、軽量なトーンアームに見合わないものを付けて音質を損ねる恐れがあるので、やはり薄型軽量級のレコードプレーヤーには軽量のヘッドシェルを選んだほうが無難だろうと考えられる。
モノラル専用カートリッジAT-MONO3のヘッドシェルを探る
AT−MONO3を取り付けるためのヘッドシェルは以下の2つの条件に絞って選定した。
・軽量であること
これは上記で述べた理由だが、TEACのレコードプレーヤーTN−3B付属のヘッドシェルが11gであることからこれを上限の重さとした。
・オーバーハングの微調整が可能なこと
オーバーハングについては、詳しくは過去の記事を参考にしていただきたいのだが、ヘッドシェルによっては、カートリッジの取り付けビス穴が固定されているものと、ビス穴ではなく溝が切ってあるだけのものとがある。
ビス穴が固定されているものは、何個か開いているビス穴の位置を選ぶしかない。
オーバーハング調整については、そんなに神経質にならなくても良いとの意見もあるが、微調整できるに越したことは無いのでビス穴が固定されていない溝穴が切られているタイプのものを選ぶことにした。
比較検討した3つのヘッドシェル
①オーディオテクニカ AT−HS10
<メーカーサイトより抜粋>
取り扱いやすい軽量モデル。
約10.0gの軽量ボディで幅広いトーンアームに対応します。
不要振動を抑制するアルミダイキャストボディ。
音の雑味の原因となる不要振動を効率よく抑え美しい音色を奏でます。
高信頼の金メッキ接点のリードワイヤー。
伝送ロスを減らし、安定した信号伝送を可能にします。
針先に近いフィンガーリフトを採用。
ヘッドシェルの前方にリフトを配置。正確なポジションに針を落とすことができます。
②オーディオテクニカ AT-HS6 SV
<メーカーサイトより抜粋>
ユニバーサルトーンアーム用の軽量9.3gヘッドシェル。
アルミニウムダイキャストボディで不要振動を抑制。
針を落とす際の針先の視認性に配慮されたフィンガーリフト設計。
リード線や取り付けビスを付属し、手軽なインストールが可能。
ブラックとシルバーの2色展開
③オルトフォン ortofon SH-4S
<メーカーサイトより抜粋>
最も使いやすくリーズナブルな価格にすることを目的に開発されたSH-4は、フィンガーは長め、指が掛け易く落ち難い、そして指を外し易いという相矛盾する要求に応えました。4色のシェルで色の異なるカートリッジにもマッチします。日本製のこのシェルは、現在では世界の多くの国で使用されるようになりました。
●端子:金メッキ ●本体材質:アルミニウム ●自重:9.3g(取付ネジ除く)
軽量ヘッドシェルのモノラルカートリッジで音質比較
①オーディオテクニカ AT−HS10
低音から高音まで前に出てくる迫力があるが、全体的に音が雑に感じる。
よく聴くと高域が抜け切れておらず、ザラついた感覚がする。
迫力の割にはウッドベースが沈み込まない。
これは何がおかしいのか?
今後、いろいろ試してみたいと思う。
②オーディオテクニカ AT-HS6 SV
①と比較すると見通しが良くなった。
サックスがスムーズに鳴る。
低音域は深くはないが充分に乗れるウッドベースが鳴るようになった。
響きの良さを心地よく聴く事が出来た。
③オルトフォン ortofon SH-4S
雑味が無く、音の強弱が明確にダイナミックな演奏。
シンバルの高域も広がり感やドラムの奥行きが感じられる。
ロリンズのサックスがのびのびと鳴る。
低音の量感が多い曲でも、ウッドベースの音が追えるようになった。
定位も2本のスピーカーの真ん中で揺るぎなく安心して聴ける。
カートリッジの傾きによる定位の揺らぎ
同じカートリッジでもトーンアームに付けたり外したりしているうちに、音の定位が決まらない時がある事に気づいた。
針がレコード盤に着いた状態で、カートリッジを正面から見たときにヘッドシェルが左右どちらかに傾いているとモノラルで音が左右2本のスピーカーの真ん中に定位しないようだ。
オーディオテクニカのAT-HS6 SVとオルトフォンSH-4Sのヘッドシェルの上の水準器をみると、、、。
オーディオテクニカのAT-HS6 SVは片側に水準器の気泡か寄ってる。
これはヘッドシェルが傾いているからである。
(ただし、カートリッジの前後は針を盤に落とすときに当然に傾く。)
これを修正しようと、トーンアームとの接合部の遊びを利用して、ヘッドシェルを傾きと反対側に回してみるが、オーディオテクニカのヘッドシェルではどうやっても水平にならなかった。
オルトフォンのヘッドシェルでは、接合部の遊びの範囲内で何とか水平を保つ事が出来た。
黒いオルトフォンのヘッドシェルは、③SH-4Sの色違い。
下はDENONのMCカートリッジDL-103をセットした時の写真。
これも左右の傾きは抑えられている。
黒いオーディオテクニカのヘッドシェル①AT−HS10は見事に左右の傾きが抑えられているのだが、音質的に私のオーディオシステムとは合わなかったのが残念だ。
ちなみに、レコード盤に針が設置した状態でヘッドシェルの上の水準器が左右に傾いていない場合でも、水準器を載せたままレコード盤から針を上げてトーンアームをレコード盤から離すと水準器の気泡は片側に傾いていた。
従って、ヘッドシェルの左右の傾きを調整するには、必ず針をレコード盤に落とした状態でヘッドシェルが正面から見て水平になっているか確かめる必要がある。
今回たまたま、私が買ったオルトフォンのヘッドシェルが、私の持っているTEACのレコードプレーヤーのトーンアームと相性が良かったのかもしれない。
機器にはそれぞれ個体差が有るものなので、他のレコードプレーヤーの場合には別の結果になるかもしれない。
本当はヘッドシェルの傾きが調整できるようなトーンアームが備わっているレコードプレーヤーで有れば相性の問題も解決できるのだが、私のレコードプレーヤーのようにトーンアームの調整機能が無い場合は、ヘッドシェルを買ってみるしか確かめようが無い。
あとはアンチスケーティングの掛け方を変えて音の定位を改善するという方法をオーディオテクニカのヘッドシェル②AT-HS6 SVで確かめてみたが、私の環境では改善しなかった。
CDプレーヤーではこのような苦労は無いが、アナログレコードは音にこだわると本当に微妙な調整を強いられる。
しかし、アナログレコードは正しく調整や対策を行えた場合に期待以上に応えてくれるような気がする。
これは単に調整に費やした苦労や時間がそのような気にさせるのか?
ソニー・ロリンズの「橋」の1枚だけだったモノラルレコード盤も、徐々に枚数が増え続けている。
またアナログレコードの奥の深さを覗き込んでしまったようだ。
尚、MC型ステレオカートリッジの超定番DENON DL-103もヘッドシェルによって音が激変した。
ヘッドシェルはアナログレコードにとってかなり重要なパーツであることが理解できた。
オルトフォンの軽量ヘッドシェルは、オーバーハングの調整もしやすく、カートリッジの取り付けも行いやすかった。
カラフルでカジュアルなイメージがあるが、さすがカートリッジの老舗の実力は侮れない。
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2020年7月19日