【CANARE】の自作RCAケーブルで響く CBS/SONY SONP SX-68サウンド
オーディオをやってきてストイックに「Hi-Fi」を追及していくと、システムや音源の粗が露呈し音楽をリラックスして聴くことができなくなる時がある。
音を気にせず音楽をゆったり聴くためには「Lo-Fi」なオフモードのオーディオがあっても良いかもしれない。
そんなオフモードにできるインターコネクトケーブルを手に入れた。
それは驚くほど安いのだが、音楽性の豊かな音を聴くと病みつきになる。
更に、このケーブルに相性の良いレコード盤があることも見つけてしまったのだ。
オーディオは無数な組み合わせからお宝を見つけだすという楽しみがある。
【目次】
「In A Silent Way」の響きを感じる
マイルス・デイビスの「In A Silent Way」は1969年の録音で、当時のジャズ界では物議をかもすアルバムだったと伝えられている。
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ジョン・マクラフリンのギターにチック・コリアのエレクトリックピアノが聴く者を異空間へと導いていく。
弓で引くデイブ・ホーランドのベースのウネリのなかで、左側からギターが右からエレピが鳴った瞬間「これはハマった!」と思わずニヤケてしまう。
それはCANARE MS202で作ったRCAケーブルを繋いでから6枚目に聴いたレコードだった。
この心地よいLo-Fi感はいったい何なのか?
カナレには珍しい高音質追及タイプのオーディオケーブル
RCAケーブルはリファレンスとしてモガミ 2549で自作したものを使っているが、今までインターコネクトとしては使ったことがなかったカナレに興味がありRCAケーブルを自作してみた。
CANARE(カナレ)は放送用やPAなどの業務用から民生用まで幅広く使い続けられている日本の老舗ケーブルメーカーでご存知の方は多いと思う。
スピーカーケーブルでは4S6 や4S8 の4芯、インターコネクトケーブルでは L-4E6Sの4芯シールドのマイクケーブルがあまりにも有名だが、今回はそれを使わずMS202-2Pという2芯シールドのケーブルをチョイスした。
注意:カナレには似た型番のMC202というケーブルがあるが、それは2芯の2ATから32芯の32ATまであるPA用途のマルチケーブルなのでお間違いのないように。
今回 購入したMS202も2Pから12Pまであるマルチケーブルだが、カナレとしては珍しく音質を重視したアナログオーディオケーブルとして発売されている。
尚、RCAケーブルの作り方に興味がある方はモガミ2534で作った記事を参照していただきたい。
今回のカナレも同様に片側のみシールドをマイナス側に落とし方向性を持たせている。
カナレのMS202はMOGAMI 2549や 2534 NEGLEXシリーズのようなHi-Fi寄りの音に比べて、聴き心地の良いLo-Fiな音がする。
ここでいうLo-Fiとは、ハイエンドケーブルのように細かい音を際立たせることはないが、音楽が聴きやすくノリや心地良さを味合わせてくれるものに限ってのことだ。
感覚としてはビンテージケーブルに近いと思う。
CANARE MS202とカートリッジの相性
CANARE MS202-2PはDENON DL-103 MC型カートリッジよりも、オーディオテクニカのVM型カートリッジ AT-VM95ML 無垢マイクロリニア針やオルトフォンのMM型カートリッジの2M Red と相性が良いようだ。
CANARE MS202-2Pの自作RCAケーブルでレコードを聴いてみると結構ハマるものがある。
先ほどのマイルスの「In A Silent way」 の次に「ネフェルティティ」を聴いてみたが期待に反してイマイチだった。
ちなみにこのネフェルティティはUS盤のPC 9594というレコードだ。
ネフェルティティはSONP-50186 という日本盤も持っている。
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試しにこの日本盤のSONPのネフェルティティを聴くとバッチリハマってくれた!
実は最初に聴いた「In A Silent Way」も日本盤でCBS/SONYのSX-68サウンド SONP-50131というものだった。
もしやと思い「Someday My Prince will Come」 、「ポギー アンド ベス」、「マイルス イン ザ スカイ」と次々に持っているマイルスのSONP盤を聴いてみた。
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ほかのSONP盤も聴いてみると、どれもがピタッとハマって思わずニヤけてしまう。
聴いた瞬間から音場がゆったりと広がり、決して周波数レンジは広く感じないが各楽器の響きが実に生々しい、これぞ求めていた"Lo-Fi感"!
「Someday My Prince will Come」SONP50213では、出だしのリズミカルなウッドベースとドラムのシンバルの刻みからピアノの前奏が響き、マイルスのミュートトランペット始まるとそこにスポットライトがあたる。
チャーミングで魅力的な演奏がCANARE MS202-2P で更に際立った。
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「ポギー アンド ベス」SONP 50148 では、ギルエバンスオーケストラのハーモニーが厚みを持って広がり、その温かさや優しさに包まれマイルスの熱くなりすぎないトランペットに引き込まれていく。
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「マイルス イン ザ スカイ」SONP 50023 ではトニー・ウイリアムスの熱いドラムが奥行き感を持って空間に散乱する。
1968年のこの時期からマイルスはエレクトリック楽器を取り入れてくる。
アコースティック楽器だけでなくエレキギターやエレクトリックピアノのグルーブ感をこのカナレの細いMS202で作ったRCAケーブルがしっかりと伝えてくれる。
CBS/SONYのSONP盤はもともと低音の厚みがある音だが、決して暑苦しくならずカナレMS202のRCAケーブルは上手く解れた空間と楽器の生々しさを表現してくれる。
最近、スーパースワンに音工房Zのスーパーツィーターキット(ペア)を追加してフルレンジユニットでは出せなかった超高域を質感良く再現出来るようになった。
このSONPではドラムのシンバルなど高域は厚みを持ってかつ柔らかさも備えた響きが実に豊かだ。
決してワイドレンジ感を強調するようなHi-Fiを意識させず、CANAREMS202は心地よくリラックスして音楽に浸る事ができる。
カナレMS202がSONP盤にハマったの何故か?
理由の一つに、MM型カートリッジの2M Red との相性が良かったのではないかと思う。
MM型カートリッジの音質はケーブルの静電容量に左右されるらしい。
その負荷容量はシェルリード線からアームケーブル、レコードプレーヤーとフォノイコライザー(アンプのPHONO入力)の回路を繋ぐRCAケーブルを含めたトータルで考える。
ちなみにTEAC デュアルモノーラル フォノイコライザーアンプ PE-505は、MCカートリッジの負荷抵抗に加え、MM型カートリッジの負荷容量の切り替えも備えており、そのトータルの静電容量やインピーダンスを最適化する機能が備わっている。
モガミ 2549もカナレ MS202-2Pの2芯の線間静電容量が小さい。
モガミ2549の静電容量は76pF/m、カナレ M202-2Pは74FpF/m。
そして、オーディオテクニカのAT-VM95ML( 無垢マイクロリニア針)とオルトフォンの 2M Red では静電容量の最適な負荷容量に違いがあり2MRedは150〜300pFでAT−VM95MLの100〜200pFと2MRedの推奨負荷容量のほうが1.5倍大きいが、これでも低負荷容量な方で、SHURE フォノ カートリッジ M44G の推奨負荷容量はもっと大きな値の450pFとなっている。
推奨負荷容量の大きいカートリッジに静電容量の小さなケーブルを使った場合には高域ダラ下がりで伸びていく傾向にある。
逆に推奨負荷容量の小さなカートリッジに静電容量の大きなケーブルを使うと高域の特定の周波数にピークができてその先はストンと落ちるといわれている。
オーディオケーブルは静電容量が大きいと高域が減衰する傾向にあるという単純な認識だっただけに、初めてMM型カートリッジを使う場合の負荷容量の話しを聞いた時にはあまりピンとこなかった。
でも実際に推奨負荷容量が少なめのオルトフォンの2MRedやオーディオテクニカ のAT-VM95MLに静電容量の大きなBELDEN 2芯シールド・オーディオケーブル 1503AのRCAケーブルを繋いでみると高域にアクセントがつき明確な音質になる。(これはこれの良さもある)
ただ高域は伸びてなくてもピークの位置によっては高域が伸びていると人間の耳は錯覚する。
また、他の要因がある場合には静電容量だけ比較してRCAケーブルの音質が決まるわけでもない。
とにかくRCAケーブルの違いでortofon 2M Red MMカートリッジ で再生するレコードの音質が変わったのは確かだ。
もう一つの要因としてCBS SONYのSX-68SOUND SONPシリーズのレコード盤と相性が抜群に良かったこと。
SONP盤のアルバムジャケットには、SX-68という西独のノイマンのカッティングマシーンを使ってレコードに溝を刻んでいる事が示されている。
ノイマンのSX-68は当時のカッティングマシーンとしてチャンネルセパレーションに優れ、ワイドレンジで低音の大きな振幅に耐えられるものとして注目を浴びたと伝えられている。
実際にSONP盤の低音はステレオの左チャンネルや右チャンネルに振ったベースなどの低音楽器もしっかりと厚みを持って再生される。
尚、上記の静電容量やレコード盤による周波数特性などは測定器を使って調べたわけではなく、偶然にハマった音から私の単なる憶測でしかない。
色々と想像しながらレコード盤とそれを再生するハード側との相性を探るのはロマンがあって楽しいものだ。
謎が多いイコライザーカーブ
数年前からRIAAカーブやコロンビアカーブなどレコード盤に刻まれたときのイコライザー(EQ)カーブの違いが話題となっていた。
EQカーブは1954年以降にRIAAカーブに統一されているはずだが、盤によってはRIAAカーブではなくレコード会社独自のイコライザーカーブ(EQカーブ)でカッティングされているものがあるらしい。
コロンビアカーブやFFRRカーブなどを再現するためにTEAC デュアルモノーラル フォノイコライザーアンプ シルバー PE-505やアイファイ・オーディオ MC/MMフォノイコライザーiFI-Audio micro iPhono3-BLにはEQカーブを切り替えするスイッチが備わっているくらいだ。
EQカーブ調整型ラックスマン製真空管フォノイコライザー・キット にはEQカーブのセレクターはないが、LowとHighの可変ツマミが備わっておりカーブを好みに調整出来たりするのが面白い。
実はSONPのSX68SOUNDのようにノイマンのカッティングマシーンと真空管アンプを使って記録されたレコード盤はRIAAカーブのフォノイコライザーでは正確に再現出来ていないという話しもある。
試しにラックスマン製真空管フォノイコライザーでHighをほんの少しだけ持ち上げてみた。
すると先程のアルバムが更に音場が開け、ワイドレンジになり楽器の音色が際立ってくる。
ただし、あまりやり過ぎるとせっかくのLo-Fi感のカナレの良さが減ってしまう。
この辺はシステムによって良し悪しが変わってくると思う。
今回カナレのオーディオケーブル MS202-2PのRCAケーブルを自作した事で心地よいLo-Fi感の音質をカートリッジとレコード盤との組み合わせによって見つけてしまった。
こうなるとゆったりオフモードで聴くとき用として、他のマイルスのアルバムもSONP盤で買い足してみたくなってきた。
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アナログレコードは実に奥が深い。
RCAケーブル1組でこれだけの発見や考えさせられる事がある。
自分のオーディオシステムにアナログレコードプレーヤーを取り入れてから、好みの音を追求できる要素が沢山あるので音楽の楽しさが倍増する。
私はデジタルオーディオ(CD)の出だしたころにオーディオを始めてから30年後にアナログレコードプレーヤーを導入したが、出来ることなら若かりし昔の自分に会って "早くレコードプレーヤーを買え!" と言ってやりたい。
✅ほかにレコードプレーヤーの高音質再生の手法を記事にまとめています。
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2021年7月25日