「高音質は太さに比例しない!」電源ケーブルとスピーカーケーブルを見直す
~せっかく高いオーディオグレードの電源ケーブルやスピーカーケーブルに買い替えたのに、いまいち音質がアップしないのはなぜだろう...?~
それは、もしかしたら電源ケーブルやスピーカーケーブルの太さに問題があるのかもしれない!?
ここでいう「ケーブルの太さ」というのはケーブルの外径のことではない。
電源ケーブルやスピーカーケーブルの芯線、いわゆる銅線の部分である。
さらに撚り線(ヨリセン)であれば、素線という細い銅線を束ねて芯線が構成されている。
先ほど「もしかしたら....太さに問題があるのかも...」と言ったが、ケーブルの太さを考える場合は芯線と素線の両方に注意を向けておいたほうが好みの音に近づきやすくなる。
【もくじ】
電源ケーブルも単純に太ければ良いというものではなかった!
アンプなどオーディオ機器を購入すると電源ケーブルが付属してくる。
付属の電源ケーブルはあまり太くはない。
オーディオグレードという市販されている電源ケーブルやスピーカーケーブルには太くて立派なものが多い。
大蛇のようなケーブルは高級感があり、見た目にさぞかし音質が良いのだろうと思える。
「3.5sqなんてオーディオマニアからすれば最低限の太さだろう?」と当たり前のように付属のケーブルから太い電源ケーブルに交換していたのは、、、この私だった。
ネットなどで評価をみると、長さ2mぐらいの電源ケーブルでは2.0sqよりも3.5sqや5.5sqの方が評価が高かったりする。
しかし、アンプに付属している電源ケーブルはおおよそ2.0sqとそんなには太くはない。
メーカーはこの太さを基準にオーディオ機器の音作りをしているはずだ。
電源ケーブルの交換が出来なかった昔のオーディオ機器なんかは、0.75sqから1.25sqほどの平行コードが機器から直に出ていた。
そんな時代にオーディオ機器に2.0sqの電源ケーブルが使われていると、オーディオ評論家の方からは"しっかりした電源ケーブルが使われている"と評価されるほどだった。
このことから察すると、一般的なオーディオ機器では、芯線が3.5sqや5.5sqの電源ケーブルを基準に音の調整をしていないと考えられる。
電源ケーブルを交換しても自分のオーディオシステムの音に満足ができないのは、もしかしたら電源ケーブルが太すぎるからかも知れない!?
低音だけが音の厚みではない
例えば太いスピーカーケーブルは、確かに今まで感じなかった低音が迫力を増して出てくるので、音質が向上したかのように感じられる。
しかし、その迫力が増した低音とバランスを取るために銀線を使ったり導体の純度を上げたりと高音域も強化しなければならなくなる。
このように低音が強力で、且つ高音も輝いて聴こえるようになるので、やはり太くて高級なケーブルは音質が良いものだと思えてくる。
少し乱暴な言い方をすれば、"まず太いケーブルありきで高音でバランスをとる"という手法で作られているているのではないか?と想像してしまう。
例えば、低音はウッドベースが鳴っている時にしっかりと下まで力強く伸びてくれれば良く、低音楽器が鳴っていない時にまでむやみに低音の厚みを求めても仕方がない。
ビル・エヴァンス・トリオのヴィレッジヴァンガードでのライブ収録には、地下鉄の列車の走る超低音ノイズが記録されている。
地下鉄の超低音を何とか再生するために、太いケーブルを使って低音をマシマシにしたいという気持ちはオーディオマニアとして解らなくもないが、やはりスコット・ラファロの巧みなウッドベースの弦さばきを気持ちよく聴けるようにする方が音楽再生にとっては優先ではないだろうか?
かぶらない低音で音の厚みを出す
楽器個々の複雑な音色や複数の楽器の音が重なってハーモニーとなり、さらに反響音や人工的なエコーが合わさり音に厚みが出てくる。
もしも、あなたがスピーカーケーブルに3.5sqや5.5sqなどの太い芯線のものを使っていたら、一度1.25sqや2.0sqぐらいのもう少し細いケーブルに交換してみることをおすすめする。
1.25sqや2.0sqほどのスピーカーケーブルに繋ぎ換えてみると、意外と数多くの楽器の存在に気付かされたりする。
少々ケーブルが細くなっても、音がやせ細ってしまうことはない。
1.25sqや2.0sqのケーブルでも、ベースなどの低音楽器は音階が明確になり力強く十分に下の方まで鳴ってくれる。
さらにそれぞれの楽器の響きや細かい音もよく聴き取れるので、広がりや奥行きという音場感も増してくる。
スピーカーケーブルだけでなく、音が良いという評判の太い電源ケーブルを使用しても、システムにとっては低音が肥大化している可能性が高い。
太すぎる電源ケーブルによって、低音が中域や高域にかぶった状態では、いくらスピーカーケーブルを交換しても思い通りの音は出てくれないものである。
日本の一般的な家屋の洋間4.5帖から8帖ぐらいをオーディオルームにしている場合、小型や中型のスピーカーを鳴らすのために、電源ケーブルやスピーカーケーブルに3.5sqや5.5sqを使っていたのなら、もしかするとそれは太すぎるかも知れない。
ケーブルが太すぎるかどうか?は体感することが大事
これからオーディオを趣味にしていこうと思っている方には、早い段階から以下で説明する体験をしておくことをおすすめする。
1.25sq, 2.0sq, 3.5sq, 5.5sqのように、太さの違うキャプタイヤケーブルをホームセンターなどで買ってきて、自分のオーディオシステムのスピーカーに繋ぎ換えて比較試聴してみて欲しい。
自分は若い頃からオーディオ評論家の長岡鉄男氏の大ファンだった。
氏の推奨する"スピーカーケーブルは太くて短いキャプタイヤケーブルが良い"という考え方を信じて、3.5sqのキャブタイヤケーブルをスピーカーケーブルとして使っていたことがある。
しかし雑誌に書かれているような音質とはならず、疑問に思い自分でスピーカーケーブルの太さを変えて実験したことがあった。
長岡鉄男氏設計の 10cmフルレンジ バックロードホーンの傑作スーパースワン やダイヤトーンの30cmウーファー3wayブックシェルフスピーカーに1.25〜3.5sqのキャプタイヤケーブルを何度も繋ぎ変えてはしばらく聴いてみた。
実験の結果、5.5sqでも3.5sqでもなく1.25sqのスピーカーケーブルが自分のシステムにとってベストだったのは意外な発見だった。
これは部屋や装置や聴いているソフトによって、人それぞれ違うのかも知れない。
ケーブルのレビューなどをいろいろ読み漁るより、一度思い込みを捨てて実際に自分の耳でケーブルの太さによる音の違いを確かめてみることが、今後のケーブル選びの参考になる。
ホームセンターで売っている電力用キャプタイヤケーブルはとても価格が安い。
太さの比較試聴をして気に入ったのならそのままスピーカーケーブルとして使用しても何ら差し支えない。
電力用のキャプタイヤケーブルでも、自分のシステムにとって最適な太さでピッタリとハマれば、「いったい今まで自分は何を聴いていたのだろう?」と思えるくらい良い音で鳴ってくれる。
素線の太さの違いによる音の違いを知る
ここまではケーブルの芯線の太さの違いについて、主に低音の出方による影響を説明した。
自分のオーディオシステム(部屋を含む)にとって適切なケーブルの芯線の太さが把握できたら、つぎは高音の出方を確認する。
それはスピーカーケーブルの芯線を構成する素線の太さに注目することだ。
撚り線は細い素線を束ねて1本のケーブル(芯線)になっている。
同じ2.0sqの芯線の場合、それを構成する素線が細くなるほど素線の本数を増やす必要があり、素線が太くなるほど素線の本数は少なくなる。
一見、"1本のケーブルにするために束ねているのだから、互いに接触し合っている素線の細さや本数なんて関係ないのでは?"と思うかもしれない。
極端にいうと、"同じ芯線の太さであれば単線であろうと撚り線であろうと同じではないか?"という意見もあるだろうし、自分もそのように考えたこともある。
しかし、実際に芯線を構成している素線の太さによる違いは明確に再生音に表れるのである。
それはドラムのシンバルの音を聴けば簡単に実感できる。
素線が太いほど、スティックでシンバルを叩く音がカチッと強調される。
素線が細ければ細いほど、シンバルを叩いたあとのシュワーという炭酸水をコップに入れたときのような、きめ細かい余韻が聴き取れる。
これは自分がリアルだと感じる素線の太さを探る目安となる。
芯線の太さと素線の太さの違いを明確に感じやすいケーブルとしてうってつけなのが、ベルデンのスピーカーケーブル8460と8470だ。
ちなみにそれぞれの構成は以下のとおりになっている。
・ベルデン8460は芯線が18awg (約0.82sq相当)で、素線が0.32mm×7本
・ベルデン8470は芯線が16awg(約1.22sq相当)で、素線が0.28mm×19本
写真のように
上:ベルデン8460は18awgと芯線が細い割には、素線が太くて素線の本数が少ない。
下:ベルデン8470は8460より太い芯線の16awgだが、8460より素線が細く本数が多い。
プロケーブル BELDEN ベルデン 8470 16GA 2本セット (4m)
ベルデンの8460と8470をスピーカーに繋ぎかえて音を比較して聴くと、素線が太く本数の少ない8460は、全体的に引き締まりドラムのシンバルはカチッとして直接音が明確に鳴る。
一方、8460と比較して素線が細く本数の多い8470は8460より少し和らいで、よりシンバルの余韻を感じとることができる。
簡単にいうと素線が太いほどカチッと鳴り、素線が細いほどきめ細やかな鳴り方をする。
このことを体感するとケーブルによるチューニングは更にやりやすくなる。
素線の細さによる音の違いは電源ケーブルでも同じことが言える。
・フジクラのCV-S 3芯 電源ケーブル (2.0sq)は素線が0.6mmと太く、7本という少ない本数で構成されている。
オヤイデ PC-23 軟質OFC電源ケーブルは素線が細くてフジクラ より素線の本数が多い。
0.18mmの細い素線12本を更に7本まとめたロープ撚り構成の約2.0sqの電源ケーブル。
その中間の素線の太さなら、カナレ2.0sq LP-3V20AC シールド付電源ケーブルやベルデンBELDEN 19364 というの電源ケーブルがある。
カナレやベルデンの電源ケーブルを2.0sqの標準とすれば、自分の好みに応じてどの方向へ行きたいか視えてくると思う。
※写真はカナレ3.5sq
カナレの2.0sqは、素線が0.26mm×37本の構成
ベルデンの2sqは素線が0.25mm×41本の構成
わたしはラックスマンのプリメインアンプを購入したとき、付属の電源ケーブルには見向きもせず、カナレやフジクラ の3.5sqの電源ケーブルに交換して使っていた。
ちなみにカナレ 3.5sqは素線0.32mm×45本で構成され、フジクラ 3.5sqの素線0.8mm×7本で構成されている。
カナレ3.5sq よりフジクラ3.5spのほうが個性的でパワフルに鳴る。
ある時、ラックスマンのプリメインアンプ付属の2.0sqの電源ケーブルをパイオニアのN-70Aというネットワークプレーヤーに繋いでみて、音が滑らかであまりにも高音質に鳴ることに驚いた。
このラックスマンのアンプに付属している2.0sqの電源ケーブルは音が良いので、付属品にとどまらずに単独で販売されるほどの優秀なケーブルだった。
ちなみにラックスマンのアンプに付属していた電源ケーブル、JPA-10000は芯線が2.0sqで素線が0.18mm×84本となっている。
電源ケーブルとスピーカーケーブルの相性
前項まで説明したように、ケーブルの芯線と素線の太さについて音の傾向が体感できたのなら、つぎに電源ケーブルとスピーカーケーブルの組み合わせを何通りか試してみると良い。
最近、私のメインシステムのケーブル類は、以前より細いものに変わってきた。
長らく電源ケーブルにはカナレの3.5sqを使い、10cmバックロードホーンのスーパースワンのスピーカーケーブルには芯線16awgのQEDのSignature Ravelationで落ち着いていた。
QED(キューイーディー) Signature Revelation
もう1組のメインスピーカーである3wayトールボーイのaudio pro AVANTO FS-20 には、14awgのQEDのPerformance originalというスピーカーケーブルをつないでいた。
しかし 最近はプリメインアンプの電源ケーブルをカナレの3.5sq から同じくカナレの2.0sqにダウンサイジングしている。
スーパースワンのスピーカーケーブルは、weの復刻版18awgに換えた。
weの復刻版18awg はかなり前に購入したものだが、曇った音にガッカリして一度知人に譲って手放していた。
しかし電源ケーブルを3.5sqから2.0sqにして、スーパースワン に繋いでいたQEDのSignature Ravelationから久しぶりにベルデンの8470に繋ぎかえてみたき、同じ16awg にもかかわらず音の出方がガラッとかわった。
たまに気になっていた耳に刺さる高音がおさまりつつも、シンバルの厚みが増してレコードでジャズを聴くときに最高にフィットしたのである。
これに気を良くして知人からwe復刻版の18awg を買い戻してスーパースワン に繋げたみたところ、ベルデン8470とはまた違ったシャープさが出つつも、シンバルの余韻が感じられ奥行き感も増し色々な曲に広く適合するようになった。
・ウエスタンエレクトリック(WE)の復刻版18awg
・ウエスタンエレクトリック(WE)の復刻版16awg
・ベルデン8470
ちなみに芯線が細く素線の太いベルデン8460も試してみたが、スーパースワン では曲によっては少しシャープすぎるようだ。
ただしベルデン8460は小型のブックシェルフ スピーカーではかなりのパフォーマンスを見せてくれる。
・ベルデン8460
一方、we復刻版18awg のスピーカーケーブルは、ベルデン8470やQEDのSignature Ravelationなどの16awgより細いにもかかわらず、痩せた感じはなくしっかりとベースの音階が感じられ下まで伸びており、サックスも実にリアルで力強くブロウし突き抜ける感じもよい。
更によかったことが、レコードプレーヤーのカートリッジの違いやフォノケーブル(RCAケーブル)の違いが以前より明確に聴こえるのが楽しい。
プリメインアンプの電源ケーブルを3.5sq から2.0sqに細くしてみて、初めてwe復刻版18awg の実力が発揮出来たようだ!
更に、2022年2月25日に発売された最新の限定ユニットに交換するとどうなるかが楽しみだ!
[rakuten:chuya-online:10179052:detail]
もう1組のメインスピーカーであるトールボーイのaudiopro fs-20にはQEDのPerformance originalからQEDの79strandという同じ芯線の太さ14awgのスピーカーケーブルに換えている。
それぞれのケーブルの素線の太さは調べてもわからなかったが、同じ14awgでもケーブル自体の硬さがかなり違う。
手触りとしてPerformance originalは固く79strandは柔らかいが音にもそれが出ている。
やはり、ケーブルには手触りと音の関係があるようだ。
アンプの電源ケーブルに3.5sq を使っていたときに、スピーカーケーブルにQEDの79strandを繋ぐと響きは良いが音像が大雑把でスピード感がなく相性としてはジャズを聴くのには物足りない部分があった。
しかし、電源ケーブルを2.0sqにするとガラッと変わり、QEDの79strandは中高域が明確で艶が感じられ、高音のシンバルはステックで叩くカチッという音とシャーンと散乱する音が両立しビックリするくらい良い音が出てきた。
もしかすると79strandは同じ芯線の太さのPerformance originalよりも素線が細いのかも知れない。
ちなみに電源ケーブルを2.0sqのままで、上位価格のQEDのSignature Ravelation16awgを繋いでみたが、この組み合わせでは79strandには及ばず少し荒れて聴こえた。
このようにケーブルは決して太さや価格だけではきまらず、組み合わせによる相性があることを改めて実感した。
これだからオーディオは面白い
食べ物でも人それぞれ好みが違う。
ひたすら素材の味にこだわる人、薄味が好きなひと、濃い目の味じゃないと物足りない人、スパイスの効いた辛口が好きな人、甘いものが好きな人、サッパリしたものを好む人やコッテリが好きな人などと好みは千差万別。
オーディオも人それぞれ好みが違う。
この記事でお伝えしたのは、自分にとって美味しいと感じる音にするために、ケーブルの芯線と素線に注目してみるという方法だ。
食わず嫌いだった2.0sqの電源ケーブルに交換することによって、イマイチと思っていたウエスタンエレクトリック(復刻版)のスピーカーケーブルとの相性が抜群になり、自分のオーディオシステムから鳴る音がガラッと変った。
ケーブルは色々な要素を持っており、決して芯線の太さと素線の本数だけで音が決まるというほど単純ではない。
システムによっては3.5sqや5.5sqのケーブルが合う場合も当然あり得る。
ただ芯線や素線の太さによる音の傾向を知っておくと、今後のケーブル選びや組み合わせ方のヒントになると思う。
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2022年2月20日投稿