AT-VM95MLが「羊の皮をかぶった狼」だったと知らしめた【KS-Remasta】のシェルリード線
オーディオテクニカ VM型ステレオカートリッジ AT-VM95ML 無垢マイクロリニア針は、AT-VM95Eの本体から針を交換するだけでマイクロリニア針の良さが味わえる。
マイクロリニアの95ML 交換針に付けえて AT-VM95ML 無垢マイクロリニア針となったときのあまりの静けさに驚いたのだが、今回シェルリード線を交換してみて AT-VM95ML 無垢マイクロリニア針がただ静かなだけの羊ではなかったことに驚いた。
それは血の気の多い狼の一面を見せつけれたからなのである。
【もくじ】
以前、オーディオテクニカのリーズナブルなカートリッジAT-VM95Eの交換針を無垢マイクロリニア針に交換してVM95MLへとグレードアップを図った。
その時に採用したシェルリード線は【KS-Remasta】のKS-LW-4500LTDというスーパーアニール処理を施した5N相当の高純度無酸素銅(OFC)の導体のものだった。
KS-LW-4500LTDは、無垢のマイクロリニア針のSN比の良さを引き出してくれたシェルリード線だったが、私の不注意でヘッドシェルを交換するときにチップを破損させてしまった。
オーディオテクニカの VM型カートリッジ AT-VM95MLは色付けのない高SN比な音は良かったのだが、DENONの超定番 MC型カートリッジ DL-103にKS-LW-4000LTDを取り付けたときほどの感動までには及ばす、心のどこかでAT-VM95MLの限界か?と思っていた。
KS-Remastaの柄沢さんに相談したところ、何種類かのサンプルのシェルリード線を送っていただける事となり、試聴して修理もしくは新たなリード線を購入するかを判断する事にした。
届いた日がちょうど日曜日だったので、早速シェルリード線のサンプルを聴いてみた。
すると物静かなAT-VM95MLから驚きの音質がつぎつぎと飛び出してくるではないか?!
なんと!AT-VM95MLの正体は”羊の皮を被った狼”だったのだ!
オーディオテクニカ AT-VM95MLで聴く KS-Remasta シェルリード線の組み合わせ3種類
試聴したのは3種類のシェルリード線
① KS-LW-4000Premium
② KS-LW-1800EVO.1
③ KS-Stage101EVO.1
さて、今回のシェルリード線たちは一体どんな音なのか?
AT-VM95MLとそれぞれのシェルリード線の組み合わせでレコードを試聴した順番通りに以下に記載している。
①AT-VM95MLとLW-4000Premiumで試聴
KS-LW-4000Premium(税別価格6,000円)
ちなみにDL-103と好相性のKS-LW-4000LTDとKS-LW-4000Premiumの違いはハンダのみで、4000LTD(税別価格5,000円)で使っていたゴールドニッカスからPremiumのハンダはプラチナ入りゴールドニゲカスが使用されている。
KS-LW-4000LTDやKS-LW-4000premiumのベースになっているのがKS-LW-4000MRで、初めてシェルリード線を交換した方は、おそらく4,000円という安い価格からは信じられないほどの音がすると思う。
・オーネット・コールマン・トリオを聴く
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断線させてしまう前に聴いたAT-VM95MLとKS-LW-4500LTDの組み合わせよりも、このKS-LW−4000Premiumのほうが聴き応えがある。
ドラムの迫力やウッドベースの低音が厚み増し、トリオならではのオーネットコールマンのユニークなフリー過ぎないアルトサックスの音色が心地よく聴けた。
・キースジャレト・トリオを聴く
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ピアノの立ち上がり、ベースのスピード感と厚みが素晴らしい。
AT-VM95MLからこんなホットな音が聴けるとは思わなかった。
しかし、ECMレコードの美音系の音ではなく若干荒さが見え隠れする。
買ったばかりのスピーカーケーブルでもそうだが、新しいケーブルは巻きぐせやスピーカーとアンプを接続するためにケーブルを引き回した際にケーブルにかかる捻じれなどのストレスが解放されるまでには時間がかかる。
導体に信号を流すことよりも、ケーブル自体のストレスが解放される事によって機械的なエージングが進んで音も安定してくる。
特にリード線はヘッドシェルとカートリッジの間で強く曲げるので、始めうちは結構ストレスがかかっている。
しばらくすれば細かいニュアンスがもっと出てくるはずだ。
・ビル・エヴァンス・トリオを聴く
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高音のシンバルが柔らかい。
ドラムやベースに厚みがあり安定感がある。
前に向かって音が出てくる感じは良いが、このアルバムの良さである切れと奥行き感があまり感じられない。
・キャノンボール・アダレイのサムシングエルスを聴く
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これもベースがしっかりと厚みがあり安定感が増している。
ドラムのブラシの音にも厚みがあり、リズムセッションの聴き応えがある。
マイルスのミュートを付けたトランペットの鋭さが増した。
若干、キャノンボールアダレイのサックスのエコーが控えめに聴こえる。
熱く、ぐいぐい鳴るドライブ感は魅力的。
・マイルスデイビスのネフェルティティを聴く
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それぞれの楽器の音が前に出てくる。
エコーは少なめで楽器の直接音が力強い印象。
シンバルの弾けるように散乱する感じが良い。
ベースの存在感が増した。
・MJQの ピラミッドを聴く
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出だしのビブラフォンの響きがやや控えめで部屋にエコーが充満しない。
しかし、ベースのリズムがしっかり聴こえるようになった。
このアルバムはKS-LW-4500LTDとAT-VM95MLの組み合わせの時のような静かな印象のほうが合っていたかもしれない。
【AT-VM95ML+KS-LW-4000Premiumの印象】
・ジャズを熱く鳴らしてくれる。
・音が前に出てくるが逆に言うと奥行き感が寂しい。
・スピード感は不満なし。
・レンジは充分。
・音に厚みがある。
・高域は柔らかいがニュアンスがよくわかる。
・エージング後がかなり期待できそう。
②AT-VM95MLとKS-LW-1800EVO.Iで試聴
KS-LW-1800EVO.I(税別価格10,000円)
このシェルリード線は使っている線材が単線という事で、レンジの広さより艶を楽しみたい。
ターンテーブルに乗っているレコードはそのままに、さっき試聴したばかりのMJQのピラミッドから聴いてみた。
AT-VM95MLとKS-LW−1800EVO.1との組み合わせは、KS-LW−4000Premiumのときより一気に上品になる。
ミルト・ジャクソンのビブラフォンの響きが美しい。
低域はスリムになったが、これは単線によくある最初の印象だ。
そもそもこのレコードの低音は控えめなので過不足なく出てはいる。
KS-LW-1800EVO.1は無垢マイクロリニア針のAT-VM95MLの静けさにプラスして温かい音を良く引き出せているように思う。
オーネット・コールマン・トリオのライブでは、シンバルは細くならず厚みと響きがあり、オーネットコールマンのサックスはぐっと引き締まる。
ウッドベースは厚みがあるが、ややふくよかで丸みがあり下まで伸びている感じはしない。
非常に耳あたりがよく、迫ってくるくるような音ではないが安定感がある。
キース・ジャレット・トリオでは、
ベースは厚みと広がりがあるが下まで伸びる感じはしない。
ピアノの艶と打音のバランスは良い。
ドラムのシンバルは単線にも関わらず意外と柔らかい音がする。
エージングで細かい音が出だすとさらに化ける可能性がありうる。
マイルス・デイビスのネフェルティティでは、出だしからシンバルの散乱と艶がいい。
トニー・ウイリアムスのドラムの連打が少し優しく聴こえる。
ロン・カーターのウッドベースは厚みがあるが柔らかさを伴う。
リズムセクションが腹に響くという感じではない。
これはAT-VM95MLと断線させてしまう前に聴いていたKS-LW-4500LTDの組み合わせの静的なイメージよりもう少し温かみの有る音に感じた。
ビル・エヴァンス・トリオ
暖色系のウッドベースに艶のあるピアノの響きが印象的。
ドラムのシンバルは響きが柔らかい。
バスドラムは腹に響かないが厚みや空気感がある。
この録音はビル・エヴァンスのピアノの鍵盤の打音が強く収録されているのだが少し抑えめに聴こえる。
キャノンボール・アダレイのサムシングエルスでは
ウッドベースの低域に厚みがある。
アダレイのアルトサックスが柔らかく聴こえ、これはこれで魅力的な音がする。
マイルスのミュートをトランペットの魅力よりオープンで吹いている曲の方がこのシェルリード線のふくよかさが良く出ている。
【AT-VM95ML+KS-LW-1800EVO.1の印象】
・厚みがあるが艶もある。
・単線のわりには暖色系の音色。
・小中音量で良質な小型スピーカーで鳴らすと相性が良さそう。
・大音量で鳴らすとレコードによってはベースとドラムがやや混濁する。
KS-LW-1800EVO.1は、大音量で情報量を求めるよりも静かな夜に小音量で雰囲気よく鳴らすのにはもってこいのシェルリード線ではないだろうか?
③ AT-VM95MLとKS-Stage101EVO.Iでの試聴
KS-Stage101EVO.I(税別価格15,000円)
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さっき聴いたばかりのサムシングエルスを聴く。
音の出だしから今まで聴いた音とは全く違う!
ウッドベースのゴリっとした筋肉質な感じに、深く伸びる低音の質感がぐっと増す。
ウッドベースという楽器が、上質な木で出来ているのだというのを感じさられる。
これが本当にAT-VM95MLの音なのか?と疑ってしまう。
KS-LW-1800EVO.1と同じく単線なのだが、エージングを待たなくてもこの音が出ている事に本当にエージングって必要なのか?とも思えてくるほどだ。
マイルスのミュート・トランペットの鋭さと響きが両立している。
更にトランペットの先に取り付けているハーマン・ミュートのふくよかな響きまでがリアルに聴こえてくる。
ピアノの響きやドラムの腹に響く力強さなど音の表情が豊かに聴き取れる。
キャノンボール・アダレイの突き抜けるようなアルトサックスが最高に気持ち良い!
これに決定!
即決だ!!
もうこれ以上試聴する必要はないのではないか?!
試聴ではなくこの素晴らしい音楽をずっと聴いていたくなる。
そして気がつけば最後までレコードを聴き続けてしまっていた。
リーズナブルなレコードプレーヤーにリーズナブルなカートリッジでこの様な音が聴けると夢にも思わなかった。
AT-VM95MLはKS-Stage101EVO.Iによってとうとう正体を現したようだ。
これだけで既に結論は出ているのだが、続けて他のレコードも聴いてみた。
ビル・エヴァンス・トリオでは、一気に視界が広がるのがわかる。
ピアノの音が立っている。
ピアノ線が振動し更に共鳴している楽器というのがよく解る。
「ナイト・アンド・デイ」という曲のイントロで左側の奥からピシャ!ピシャ!とドラムの叩く音が鳴るのだが、スピーカーの遥か後方で鳴っているのが手に取るようにわかるほど奥行き感が深い。
ウッドベースの音階も明確になりバスドラムと混濁しない。
奥行き、広がり共に凄まじいのだが、楽器を演奏している奏者の姿が視えてくる。
MJQのピラミッドでは、このレコードはそもそも楽曲が良いのに音がこじんまりとしているのだが、そんな微かなビブラフォンの響きやシンバル、ピアノ、ベースの発する小さな音を良く拾ってくれる。
音が立っているだけでなく、微小信号が聴き取れるので豊かな響きを感じとれるということは本当に情報量が多いと言える。
オーネット・コールマン・トリオでは、ライブのオープニングのナレーションや観客の拍手のリアルさにゾクっとさせられる。
ウッドベースが引き締まりつつも下まで伸びて力感がある。
シンバルの厚みや震える様がリアルに視える。
ライブ録音で曖昧になりがちなドラムとベースの混濁もなく、聴こえてくる音の数が確実に増えている。
マイルス・デイビスのネフェルティティは、トニー・ウイリアムスのドラムが聴きどころ満載のアルバムだがKS-Stage101EVO.Iその魅力を一層引き出してくれる。
ドラムの音がが金属と木と革で成り立っているのだという事を改めて認識させられる。
ウッドベースの音量が小さな録音なのだが、存在感が増してこのアルバムでこんなにロン・カーターが力強く聴こえたのは初めてだ。
そしてウエイン・ショーターのサックスとマイルス・デイビスのトランペットのエコーが響く独特な空気感を伴うアルバムの魅力が存分に引き出された。
キース・ジャレット・トリオの「スタンダーズVol.1,2」はECMレーベルの優秀録音だが、更にKS-Stage101EVO.Iで非の打ち所が無くなる。
キース・ジャレットの指がピアノの鍵盤の上を軽やかに踊っている。
ジャック・デジョネットのドラムの巧みなスティックさばきが視える。
もともと低域の量感の充実した録音だが、更に凝縮した力強いゲイリー・ピーコックのウッドベースが充実感を高めてくれる。
このレコードも気がつけば最後まで聴き入ってしまっていた。
AT−VM95MLとKS-Stage101EVO.Iの組み合わせはいつまでも音楽を聴いていたくなる
3つ持っているステレオカートリッジは何れも【KS-Remasta】のシェルリード線に交換しているが、DENONのDL-103とオルトフォンの2MREDとオーディオテクニカのAT-VM95MLのうちどれか1つ買い換えるとすれば?と自問すればAT−VM95MLと答えていたと思う。
しかし、KS-Stage101EVO.IはAT−VM95MLを宝物に変えてくれた!
あまりの音の良さに柄沢さんにメールを送ったところ、ご本人から電話が掛かってきた。
改めてKS-Stage101evo.1の素晴らしさを伝えると、ビックリしたことに KS-Stage101EVO.1はKS-LW−1800EVO.1と全く同じ銅の単線を使っているという。
違いは同じ銅線でも表面を磨いて鏡面仕上げにしているとの事だった。
音声信号は銅線を断面で見て中心より外側の表面に沿って高域が流れようとする性質があり、その高域の通りを良くするために表面を磨くのだという。
使われている単線のメーカーなどの詳細は聞けなかったが海外製の高純度OFCとの事。
しかし8NOFCという銅線の純度だけできまるというような単純な事ではないそうだ。
線材の表面を鏡面に磨きを掛けて、ハンダやチップを吟味し長年の研究と鍛錬のなせる技だと思う。
柄沢さん曰く、15年以上前から作成し続けているKS-Stage101EVO.1は年月を重ねるに連れて腕にも磨きがかかり音質が良くなり続けているのだそうだ。
今回のシェルリード線の試聴で、ケーブルは純度だけで音質が決まらないという事を再認識させられた。
オーディオを30年以上ずっと趣味にしているがこんなに驚くことはそう頻繁にはない。
決して高級カートリッジではないAT-VM95MLからこんなにも高音質が得られるとは夢にも思っていなかった。
さらに、柄沢さんは「これは間違いなくオーディオテクニカのカートリッジが拾っている音だ」と言われていた。
だとすれば、たった4cmのシェルリード線の重要性は計り知れない。
下手にカートリッジを買い換え続けて迷走するよりもKS-Remastaのシェルリード線を組み合わせてカートリッジが拾っている音をロスなくフォノイコライザーに伝える事のほうが高音質への近道になるのではないだろか?
17,000円のカートリッジに15,000円のシェルリードという組み合わせは今回の試聴の機会がなければ試そうとは思わなかった。
しかしこの事実を目の当たりにすると「価格バランスを取る」だけの手法では非常に勿体ない事をしているのだと考えさせられた。
そしてこのAT-VM95MLは決してDL-103に見劣りしないという事がわかった。
羊の皮を被ったオーディオテクニカの無垢マイクロリニア針AT−VM95MLが狼だった事を暴いた【KS-Remasta】のKS-Stage101EVO.Iの価値は計り知れないものがある。
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更に高級なカートリッジを買った日には、KS-Stage201EVO.IやKS-Stage301EVO.Iもぜひ試してみたいものだ。
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【KS-Remasta】のホームページ はこちらから
http://www.ks-shell-lead.biz/shopbrand/001/O/
✅カートリッジの使いこなしのほかにも高音質再生の手法を記事にまとめています。
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2021年3月20日新規投稿