自作スピーカーは仕上げてなんぼ?!
"素材の味を活かす"
"何も足さない、何も引かない"
いい言葉だと思うが、それが全てでもないのも事実である。
そう言い切れるのは、シナ合板で作りっぱなしの自作スピーカーを20年を経て塗装仕上げし、初めてその高音質ぶりにショックを受けたからである。
組み立てて終わりの自作スピーカーたち
日曜大工でスピーカーを作成するのが楽しかった。
月刊誌のStereoで6月号といえばオーディオ評論家の長岡鉄男氏設計の新作スピーカーが掲載されるので、毎年この時期はわくわくしながら本屋に予約して購読していた。
氏は誰にでもわかりやすく板取図のカットするパーツごとに①②、、⑳など番号を振り、その番号の順番通り組み立てると楽にスピーカーが組み立てられる設計図を掲載していた。
スピーカーに使う板も、一般的にホームセンターなどで手に入るベニヤやシナ合板を使っている。
板取もできるだけ無駄のないように考えられ、それを一つの制約として設計されており尽きることのないアイデアに魅了された。
そんな氏のスピーカー工作の記事は、基本的には組み立ててから、ユニットやネットワークを付けて配線し、視聴レビューするというもので、仕上げの工程は無かった。
当時はバックロードホーンなど氏の設計をもとに読者が作成されたスピーカーを雑誌に写真が掲載されているページを見ると、ほとんどが作りっぱなしの仕上げられていないものだった。
長岡鉄男氏は仕上げをすることによるメリットについては何度も説明されており、それは読者に委ねているというスタンスだった。
我々ファンは早く作って音を聴きたいという欲求が先立ち、すぐに音を出してしまう。
しばらくエージング(ボンドが乾く、木の歪が落ち着く)してから仕上げようと思うが、なかなか手が回らないというのが実情か?
実際に私もスーパースワンなどシナ合板で自作してから2017年まで仕上げをしていなかった。
かれこれ20年が経った。
ダイノックシートで仕上げたスピーカー
テレビ用のMX−20AV とAV1ーmk2はダイノックシート貼りで仕上げて、細かい部分はさておき概ね満足している。
仕上げ前や工程の写真はないが、ダイノックシートは大きなシールのようなもので、作業中にペタペタとひっついて苦労する。
建築の内装業者でも、壁のビニルクロスや床のクッションフロアーは貼ることができても、ダイノックシートは貼ってくれない職人さんが多い。
ダイノックシートは、ダイノックシート貼り専門の職人さんがいるくらい貼るのが難しい。
昔、仕事の関係でクロス貼りの内装の職人さんと話をしていたが、「ダイノックシートだけはやりたくない。」と言っていた。
仕上げにこだわるダイノックシート貼りのプロの職人さんでも、失敗すると剥がして貼り直すことができない箇所は、また新しいダイノックシートを使ってやり直すことになる。
また、ダイノックシートを貼る前にも下地処理をしっかり行わないと気泡ができたり浮いてきたりする。
でも、ダイノックシートは単色のものだけでなく、艶あり、艶なし、木目調、大理石調など種類がたくさんあり、ビルやマンションのエントランスや店舗の改装などで使用すると見違えるようになる。
テレビ用スピーカーMX-20AVの仕上げ
リビングのテレビ台とテレビに挟まれているフルレンジユニットが3つのスピーカーも長岡鉄男氏設計。
その型番はMX-20AVという。
これ一台で、普通のプリメインアンプでサラウンドが実現出来る。
これは組み立てる前にカットした板にダイノックシートを貼ったので、特に苦労した記憶はない。
尚、木口の部分はうまくシートが貼れなかったので東急ハンズで物色し、薄い長細いオイルステインで仕上がっている15mm幅の棒を貼りつけている。
テレビ台兼用バックロードホーンスピーカーAV1-mk2の仕上げ
これは実家にいるときに作ったもので、独立後寝室にテレビを置きたくなって、実家から運んできたテレビ台兼用のスピーカー。
と言うより家具?
結婚して独立したときも、まだシナ合板がむき出しのまま仕上げをしていなかった。
スピーカーヘッドと台の表面と棚とで合計4種類のダイノックシートを使った。
これはすでに組み立て済みだったので、入り組んだところやシートを巻き込まないといけない箇所が多々ありダイノックシートを貼るのに結構苦労した。
しかし、ダイノックシートで仕上げると見違えるようになり部屋とよく馴染み、圧迫感がかなり減った。
特に貼る面積が広いためか、共振が抑えられ音質もSN比がよくなった。
もともとは25インチのブラウン管テレビ用として長岡鉄男氏が設計したものだが、氏も母屋の和室のコーナーでこれのもとになるAV-1を使っておられた写真を見たが、仕上げはされていなかったと思う。
仕上げをして最新ユニットに入れ替えたAV−1MK2の音の良さを氏にも視聴して貰いたいぐらい良い音に生まれ変わっている。
塗装で仕上げたスーパースワン
2017年の暑い夏の日、重い腰を上げてようやくスーパースワンの仕上げをすることになった。
スーパースワンは形が単純な四角ではなく特にヘッド部分は面取りをしているので曲面があり、私の技術ではダイノックシートは無理と判断した。
ダイノックシートは様々な柄があり、いい柄を選ぶと確実に高級感が増すのでおすすめだが、継ぎ目や折り目をどのようにするかが難しいし、巻きこんだ木口の処理がさらにやっかいですぐにめくれてくる。
そこで塗装をすることにした。
塗料も色々あり、家の中で作業するので匂いの出ない水性塗料にすることに決めた。
ただ単色でベタ塗りをしてもあまり面白みは無いので、質感を出すために水性ウレタンニスを採用した。
ツートンカラーにしたかったので、主にマホガニーとブラックを使った。
下の写真はまだブログを始めていなかったときで、細かい工程を撮影できていないが雰囲気だけでも感じていただければと思う。
(仕上げなしのスーパースワン)
①紙やすり、耐水紙やすりで、スピーカーの表面、塗装した表面を研磨する。
(#240⇒#320⇒#800⇒#1000⇒#1500などの順番に!)
②水性ウレタンニスを刷毛で均一に塗る。
(*色を変える箇所はマスキングテープでカバーする。)
この①②の繰り返しを私の場合は5回ほど行ったと思う。
単純作業だが、回を重ねるごとに色に深みと艶が出てきて、気になっていた工作の精度の悪さなんか目につかなくなる。(2m離れれば、、だが?)
紙やすりは回を重ねるごとに目の細かいものを使う。
前半はヤスリでゴシゴシこする感じだが、後半になると磨くという感覚に変わってくる。
水性ニスは見本の色などがあるが、塗り重ねると、どんどん濃くなるのであくまでも参考程度にするとよい。
狙った色を出すのは素人ではとうてい無理なので、結果オーライで割り切る気持ちが大切だ。
塗装が乾いてスピーカーユニットを取り付けると本当に見違えるようになる。
2,3日は、我ながらよくやったと仕上がったスピーカーに見惚れていた。
ランプを近くに寄せるとそれがスピーカーに映るぐらいツルツルになった。
当然メーカーの発売しているピアノブラックのような均一な平面性は出ていないが、シナ合板の日焼けした年季の入ったスピーカーとは雲泥の差だ。
以上は見た目の変化の話だが、
十分乾燥させて音出しをした瞬間、
「いったい20年間何を聴いていたのだろうか?!」
と思うほど音質が見違えるように向上したのには驚いた!!
これは全く別物のスピーカーであり、グレードが倍以上ランクアップした感じだ!
静けさが増し、低音〜高音までレンジが広がり、細かい音や響きも再現されダイナミックレンジも格段に良くなった。
自作スピーカーを仕上げていない方は、騙されたと思って水性ウレタンニスなどで塗装仕上げやダイノックシートを使って仕上げをする事にぜひチャレンジしてみて欲しい。
きっと、お蔵入りになりかけていた自作スピーカーも化粧をしてあげれば、ルックスも音も惚れ直すことは間違いない!!
2020年9月17日更新
2020年1月13日初回投稿