マトリックスサラウンドのメリット・デメリット
昔ブラウン管テレビの時代、東芝はバズーカー、ソニーはキララバッソなど重低音にこだわったテレビが流行った時期があった。
液晶やプラズマになり夢の壁掛けテレビが誕生した。
画質の解像度もアップしたが、その代わりスピーカーを入れるスペースが取れなくなり音が犠牲となった。
最近の有機ELテレビはパナソニックはシアターバーを画面の下にくみこまれたもの、ソニーは有機ELディスプレイそのものから音声が発せられるものなどが出てきており高画質だけでは満足できない消費者のニーズに応えようと工夫されたものが販売されている。
しかし、私的にどうしても外部スピーカーで音声を再生したくなる。
テレビの音声を外部スピーカーを使って再生することがAVシステムの第一歩だと思う。
以前の記事で紹介した寝室兼オーディオルームでは長岡鉄男氏設計のAV-1mk2をブラウン管テレビの時代から愛用してきて、今でもソニーの液晶テレビでAVシステムを組んでいる。
AV−1mk2は8cmフルレンジユニットであるフォステクスFE83をLR同一のキャビネット(ヘッド)に納めてバックロードホーンにて低音を稼ぎ大音量再生が実現する。
ラック兼用のコーナー型の為、非常にスペースファクターに優れてる。
これにリアスピーカーをFE83など適当な容器に取り付けて超小型スピーカーを作りふつうのプリメインアンプ でマトリックス接続してサラウンドが楽しめる。
◆メインスピーカー AV-1mk2(ユニットはフォステクスFE83sol)
写真のテレビは以前使用していたREGZA 37ZS-1
◆100均のプラスチックの円筒状の容器の蓋に開口を設けFE87Eを取り付けた自作リアスピーカー スピーカーケーブルはカナレ4s6
🌟4本マトリックス接続の配線図はこんな感じ。
<マトリックスサラウンドのメリット>
プリメインアンプにメインスピーカーのLRを通常通り繋げ、サイド(リヤ)
スピーカーのRLとRRはマイナス同士つなぎ、RLとRRのプラス部のみそれぞれアンプのスピーカー端子のプラス部に繋ぐ。
これにより残響音のみがサイド(リア)スピーカーから再生され広大な音場感が実現し、映画などの拳銃の弾の発射音が画面から飛び出し頭上の後ろへと消えていくのが感じられるようになる。
間接音が部屋の中央にも充満するため密度感のあるサラウンド再生が可能だ。
プリメインアンプ一台でこのようなサラウンドが実現できるので非常に安く済み且スピーカーケーブルの配線だけで実現できるシンプルな構成のためか音質も良い。
スレレオ放送の映画やスポーツの実況放送でもサラウンド感が楽しめるのは魅力的。
<マトリックスサラウンドのデメリット>
上記の図ではL-R(左チャンネルから右チャンネルの音が消される。)、R-L(右チャンネルから左チャンネルの音の消される。)と記載され一見リアスピーカーのLとRは別々の信号のようだが実際はモノラル信号である。
サイド(リア)チャンネルは、左から右へなど横方向には音は移動しない。
試しにリアチャンネルのみ再生してみるとわかるが音が左右均等にでている。(頭上中心にまとまっている。)
例えば、あえて昔のジャズの曲で左側にトランペット、右側にサックスという左右に振った録音のものをこのマトリックスサラウンドで聞いてみるとサイド(リア)スピーカーからはしっかりと音量がでるもののトランペットもサックスも左右に分離せず頭上に集まってくるという違和感がある。
⭐ドルビーデジタル・サラウンドへの移行
昔は映画にしろ音楽ライブにしろビデオテープがメインで主にステレオ録音だったのでこのマトリックスサラウンドで大満足だった。
しかしDVDから5.1Chのソフトが増えてきたが、これらのソフトを再生してもビデオテープのような迫力は感じられなくなった。
やはりドルビーサラウンドは各チャンネルごとに音声が記録されているのでその意図どおり再生するほうが良いのでは?と思い始めた。
それからマランツのAVアンプNR1605を購入することとなった。
薄型で以前使っていたプリメインアンプのDENON PMA-390AEと高さがあまりかわらずラックにもおさまるのでマランツに決めた。
残念ながらAV-1mk2はメインスピーカーが左右1つのキャビネット(ヘッド)に収まっているのでセンタースピーカーの入る余地は無い。
リアスピーカーと繋げ4chでドルビーデジタルサラウンドを再生した。
結果、心配していた音質は問題なくこのスピーカーの形状上メインスピーカー自体の左右広がりは無いがその代わり映画で重要なセリフがセンタースピーカーがなくてもしっかり真ん中から音が出ているので問題ない。
それよりリアスピーカーの左右から独立した音声が再生されるのは新鮮だ。これはソフトの製作者の意図したとおりの再生がされているといえるのでAVアンプを導入した目的は果たせられた。
しかしそれでは止まらず、そもそも5.1chを4.0chで再生しているので0・1chであるサブウーファーもせっかくAVアンプにサブウーファー専用端子(RCA端子)があるので導入してみたくなった。
走り出したら止まらず、中古だが部屋のスペースを考えヤマハの縦型で薄型のサブウーファーを導入した。
◆サブウーファー ヤマハ NSーSW210
AV-1mk2は8cmのフルレンジ左右1発ずつで低音再生まで図ったバックロードホーンスピーカーである為、サブウーファーの導入は邪道ではないか?
だがそれは単なる思い込みだった。
サブウーファーがあると明らかに音に深みがでてくる。
メインのFE83solはスーパースワンほど超ハイスピードでは無いため意外とサブウーファーとのつながりに違和感が無かったのかもしれない。
ここで勉強になったのが、映画ソフトの音声信号5.1chの0.1chはLFEという独立した低音信号のみが記録されている。これはサブウーファーがあることを前提とした記録方式であるため0.1chはメインスピーカーが十分な低域再生ができたとしても、LFE信号をサブウーファーに任せたほうがよいのではないかと思った次第である。
実際サブウーファーが有る事により臨場感が増す。
だからといってサブウーファーのボリュームを上げ過ぎるとメインスピーカーとの繋がりが悪くなるので控えめに鳴らすくらいが丁度良い。
ドルビーデジタルのサブウーファーの役割はLFEを再生する事が目的であり、ピュアオーディオでスピーカーの低音域を補強する事とは全く違うので混同しない方が良い。
2019年12月21日