中学生の時の音楽室
中学生のころ学校で音楽の授業が行われる際は、普段の教室から別の音楽室に移動していた。
音楽室に入ると目にするのが小さな穴の沢山空いた壁だった。
床はカーペット敷きで、天井はジプトーンという虫食いのような穴の沢山空いた石膏ボードが貼られている。
部屋に入った途端に静かな部屋だなぁと思う反面、何か息苦しさや空間が狭くなったように感じられた。
この壁は穴の多数空いた有孔板というもので、その有孔板の裏すなわち壁の中にはグラスウールという吸音材が埋め込まれている。
穴を通った音は壁の中で吸音材で熱に変換され音が反射しないという仕組みだ。
この音楽室は、床・壁・天井いずれも音を吸収するものに囲まれた部屋なのである。
先生の指揮のもとみんなで合唱していると先生は”うーん?”と首をかしげ、「ダメだ部屋を移動しよう!」と言い始めた。
移動した部屋は少し広めの教室で、普段の教室の作りと同じくなんの細工もしていない、壁はコンクリートに塗装仕上げしたもので、床は硬いPタイル貼りだった。
天井はコンクリートか石膏ボードかは記憶していないが、その部屋で合唱すると先程の音楽室とは違い部屋中に声が響き渡るのが誰でもハッキリわかる。
音楽室とは名ばかりで、室内で発生られる音を吸収して他の部屋に音が漏れないようにしたいだけの事で音楽の事なんか何も考えられていない。
音楽の先生の判断は正しかった。
ある日、中学校の体育館でクラシックの生演奏を聴くという授業があった。
演奏が始まった瞬間、まるで音楽が天から降ってくるような感覚だった。
マイクやスピーカーなど使用していない生演奏にもかかわらず音量が大きい、しかしまったく耳が痛くない。
バイオリンの演奏でも楽器から鳴っているというより空間全体が響きに包まれている感覚で生演奏に感動した事を今でも覚えている。
オーディオは吸音と反射音のバランスと遮音が大事。
部屋の反射音は原音とは異なる余分な音という考え方もある。
イヤホンやヘッドホンはスピーカーで聴くのとは違い、耳にダイレクトに音を伝える。
イヤホン自体の特性の違いはあるものの、発せられた音は部屋の吸音や反射に影響されない。
よくできたイヤホンはソフトに録音された細かい音をしっかり伝えることができる。
しかし、スピーカーで聴く音は、部屋の影響を免れない。
スピーカーから発せられる音もイヤホンと同じソフトであれば、反射音なしでも良いのではないか?
試しに布団を部屋に入るだけ入れてカーテンを閉めできるだけ反射音が出ない状態にしてみるとわかると思うが、昔の中学校の音楽室のように音がボソボソなって面白くない。
自作スピーカーの吸音材も詰めれば詰めるほど生気の無い音になってしまうのである。
ジャズの録音で死刑台のエレベーターという映画のサウンドトラックがある。
マイルス・デイビスが演奏しているのだが、前半はスタジオ録音でエコーが付加されていない状態の曲があり後半で同じ演奏にエコーが付加され実際に映画で使われたものが一つのアルバムに収められている。
私はどっちの録音も好きだが、エコーの効果の有無で印象が大きく異ることがよく分かるアルバムである。
やはりこの映画ではエコーの付与された録音のほうが映像によくあっている。
原音再生が絶対だと言う理屈からしては、部屋の反射音は原音を阻害するものだが、はたしてそれが高音質かと言うと首をかしげるのが事実である。
やはり自分が心地よいと思う響きやスピーカーがのびのび鳴る環境を整えるのが良いのではなか?
*最後に遮音も大切であることも言っておきたい。
試しに毛布をスピーカーにかぶせてみるとわかるが意外と大きな音のままである。
吸音ばかりするよりも、部屋の遮音いわゆる音を遮断することが大切だ。
・目的は外部に音がもれないこと。(近所迷惑を考え重要)
・逆に外部の音が部屋に侵入することを防ぐこと。
(SN比の良い部屋にする。)
吸音だけでは音が漏れ放題だし、外部からの音が遮られず中学校の音楽室のように音が死んでしまうというように何も良い事は無い。
オーディオルームを造るならば、例えば二重サッシのように外窓と内窓の間にしっかり空間を設け、しっかりした壁を二重にしてその壁と壁の空間にこそ吸音材(グラスウールのような断熱材)をぎっしり詰めるべきである。
|
|
|
|
|
|
2019年12月5日